interview
ゴジラ-1.0メンバー ゴジラ-1.0メンバー

世界へインタビュー interview01

『ゴジラ-1.0』

信頼関係と
日々の積み重ねで
つながる世界への道筋。

チーフプロデューサー 守屋 圭一郎  / プロデューサー 阿部 豪  /
ラインプロデューサー 櫻井 紘史  / 制作デスク 熊谷 礼美

member

  • 守屋 圭一郎

    チーフプロデューサー守屋 圭一郎

  • 阿部 豪

    プロデューサー阿部 豪

  • 櫻井 紘史

    ラインプロデューサー櫻井 紘史

  • 熊谷 礼美

    制作デスク熊谷 礼美

『ゴジラ-1.0』は、戦後の日本(昭和20年)を舞台に、特攻任務から逃れるように大戸島に辿り着いた敷島浩一(神木隆之介)が、仲間を救うことができなかったトラウマを抱えながら、闇市で出会った大石典子(浜辺美波)と、彼女が空襲で託された子どもの明子と生活を立て直していく中、特設掃海艇・新生丸艇長の秋津淸治(佐々木蔵之介)、乗組員の水島四郎(山田裕貴)、元技術士官の野田健治(吉岡秀隆)と出会い、未曾有の生物であるゴジラの襲撃から日本を守ろうとするストーリー。

2016年公開の『シン・ゴジラ』以来、日本映画としては7年ぶりとなるゴジラ映画であり、ゴジラ生誕70周年の記念作で日本製作の実写版の30作目ともなった本作品は、山崎貴氏(株式会社白組)が監督を務め、株式会社ロボットが映像制作を担当した。2023年11月の公開以来、数々の映画賞を受賞し、なかでもアメリカ映画界で最高の栄誉とされるアカデミー賞で、日本の作品として初めて視覚効果賞を受賞。2024年5月時点で、500万人以上の観客動員数を誇っている。

インタビュー写真1
01

これまでの作品づくりの
集大成ともなった『ゴジラ-1.0』

『ゴジラ-1.0』は昭和時代を背景にした設定ですが、
どのようにストーリーを決定していかれたのでしょうか?

『ゴジラ-1.0』は昭和時代を背景にした設定ですが、
どのようにストーリーを決定して
いかれたのでしょうか?

守屋

山崎監督の『アルキメデスの対戦』(2019年/東宝)の撮影が終わったくらいのタイミングで集まった時に、「次のゴジラはどうですか?」という話が東宝さんからあったのが発端だったのですが、ROBOTの創業者である阿部秀司さん(2023年12月死去)が、日本版のゴジラを撮るなら山崎監督でと、推薦していたことも大きかったようです。庵野監督の『シン・ゴジラ』(2016年/東宝)が現代の日本を舞台にしているのに対し、山崎監督がゴジラを撮るなら、自分の得意とする時代もので勝負したいと思っていたことから、昭和時代(戦後)のストーリー展開となりました。
20年ほど前から山崎組で制作する際は、脚本を作る段階で阿部秀司さんが、大風呂敷を広げるように全体感を提案して、そこから僕たちが尺や予算、撮影のことを考えながら現実的に落とし込んでいくような感じで進めていました。今回の場合は、これまで一緒に制作した『海賊とよばれた男』(2016年/東宝)や『アルキメデスの対戦』を含め、『ALWAYS 三丁目の夕日』(2005年/東宝)や『永遠の0』(2013年/東宝)など、様々な制作ノウハウを踏まえたうえで成り立ったものだと思います。ただ、それら全てを今回の『ゴジラ-1.0』に盛り込むのはさすがに大変ではありましたが、過去の様々な経験があったからこその集大成だと感じています。

現代にはない風景も作り出さなくてはいけないという点で、
撮影準備やロケ地の選定など大変なことも多かったのではないでしょうか?

現代にはない風景も作り出さなくてはいけない
という点で、撮影準備やロケ地の選定など大変な
ことも多かったのではないでしょうか?

阿部

山崎監督の作品は割と時代ものが多いので、思ったより自然な流れで入っていけたような気がします。とはいえ、いつもの状況に甘えるわけでもなく、作品ごとに、ロケ地の選定や、段取りを考えながら撮影準備を整えていました。映画の中で中心的な存在でもある掃海艇(そうかいてい)の「新生丸」ですが、現行の船を時代ものの船として航行させながら撮影する必要があったので、「新生丸」の母体となる船を探すのが大変でした。僕と櫻井で手分けして、全国各地の中古船を探したんです。木造の名残があるとか、どこかを取っ払ったら昭和らしさが出るんじゃないかっていう目線で探していましたね。

櫻井

一番遠いところだと、長崎の五島列島まで足を運びました。結果的には名古屋で見つけたのですが、ネットではなかなか探せないので、車で港を辿りながらしらみつぶしに探すような感じでしたね。

阿部

ようやく見つけた船の縁の部分は木造だったので、これは使えるぞと思ったのですが、それ以外はFRPなので、造船会社に持っていき上屋根を全て取っ払って加工して、東宝の撮影所でまた撮影用に加工、さらにまた造船会社で実際に運航できるよう臨時検査を通してという流れでした。その後撮影スタジオにラフタークレーン(自走式クレーン)を使って搬入するわけですが、それもまた結構大変な作業でしたね。

ラフタークレーンで船を運搬している
櫻井

加え、スタジオ撮影だけでなく、撮影シーンの度に船をいろんな場所へ持っていかなくてはいけなかったんです。愛知での撮影から浜松へ運ぶ時は、沖へ行くにつれてどんどん波も高くなり、これまで経験したことのないほどの波の高さを経験したんです。目的地に辿り着いた時は、船長とふたりでずぶ濡れでした(笑)。実際の撮影でも、晴れていても海上の状況は異なっているので、常にリスクを考えながら撮影する必要がありました。当初は穏やかな瀬戸内海で撮影する予定を、予算の都合上、近場の浜松で撮影したので、思っていた以上に波の影響に振り回されることも多々ありました。

船の上の撮影
阿部

それに、撮影の時期がちょうどコロナ禍でして。撮影での衛生管理など、普段は対応しないで良い点にも気を配らなくてはいけなかったという部分もありました。プロジェクト規模も大きかったので、各所への申請やスタッフの窓口は熊谷が担当してくれました。

インタビュー写真2
02

映画制作に携わる
楽しみやモチベーション

予算管理や撮影の準備など、様々なご苦労もあるかと思いますが、
そんな中でも映画作りに携わるモチベーションや楽しみはどのように見出されていますか?

予算管理や撮影の準備など、
様々なご苦労もあるかと思いますが、
そんな中でも映画作りに携わるモチベーションや
楽しみはどのように見出されていますか?

守屋

映画によって毎回同じことをやっているわけではないので、新鮮さは常にあると思っています。同じチームでの信頼感があるからこそできることでも、常に新しい挑戦なので、そこを乗り越えていく楽しみはありますね。

阿部

準備から撮影までは本当に大変なんですが、その大変さが報われる瞬間っていうのがあるんです。ダビング作業という、関係者が作品を大きなスクリーンで見ながら最終確認をするのですが、その作品が産み落とされる瞬間が、毎回一番感動的です。

櫻井

僕の場合は、制作進行をサポートする上で、自分がプライベートで知っていること、よく行く場所などを仕事で活用する場合もあるんです。オンオフ関係なく、出会った人との関係性を仕事に生かせるのはとても嬉しいです。どれだけ自分の引き出しを多く持てるかが大切だと感じています。

守屋

大抵、でっかい駐車場探しているよね(笑)

櫻井

このアスファルトだと撮影に向いてるとか(笑)CG処理も最低限で済むな…とか(笑)

熊谷

私の場合は、スタッフの方々が良い作品を作るために自分のサポートで円滑に進められた時は、この仕事を続けていてよかったと嬉しく思えます。

インタビュー写真3
03

世界へと広がった
日本映画の可能性

『ゴジラ-1.0』は日本でも数々の映画賞を受賞されていますが、今回はアメリカ映画界で
最高の栄誉とされるアカデミー賞で、視覚効果賞を日本映画初の受賞をされましたね。
受賞を経てどんな思いを抱いていらっしゃいますか。

『ゴジラ-1.0』は日本でも
数々の映画賞を受賞されていますが、
今回はアメリカ映画界で最高の栄誉とされる
アカデミー賞で、視覚効果賞を日本映画初の
受賞をされましたね。受賞を経てどんな思いを
抱いていらっしゃいますか。

守屋

最初から世界を意識していたわけではなく、普段の積み重ね通りに制作を粛々と進めている中で、結果的にそれが大きな賞に繋がったような感覚でいます。とはいえ、賞をいただいたことで、アカデミー賞がよその国のものではないというか、身近になったような感じはあります。

阿部

授賞作品で『ゴジラ-1.0』の名を聞いた時は、思わず涙が出ましたし、自然と隣の人とハグしてましたね。記録を取る余裕もなかったです(笑)。積み重ねてきたことに評価をいただいたことは、本当に嬉しかったです。

櫻井

僕らも守屋さんが仰っていたように、最初から世界を目指していたわけではなかったんですよね。完成して日本での公開が始まっても、どれくらいの興行成績になるかさえ見当がつかなかった。ですから、今後も身近にあるテーマを突き詰めていくことで、世界の方々に届くようなコンテンツに繋がるのではないかと考えています。

インタビュー写真4
04

ROBOTだからできること

守屋

それぞれ役職が変わりながらも20年くらい同じチームで動いているんですよ。だからこそ、それぞれの得意分野も理解したうえで役割分担ができるというか。信頼関係があるという感じですね。それぞれフリーランスで働いていた頃もありつつ、今では皆がROBOTに入社し、それでも同じチームで制作を続けられている。同じ題材でもプロデューサーが違えばまた別の手法が生まれるという感じで、映画はやはり、作品に関わる人によって作られているなと感じます。監督は画面に映るものをコントロールしますが、制作側は、予算、ロケ地、制作スケジュールに加え、スタッフの人員とか、弁当の手配など、細かい所まで調整が必要なんですよね。そういう意味では、チームでの連携感は本当に大切だと感じています。

阿部

ROBOTって、会社でありながら自由度の高い社風があるんです。それぞれの領域の中で自由に楽しみながら仕事ができるのは、この会社ならではだと感じています。

櫻井

世の中にたくさんの映像作品が必要とされる中で、ROBOTという制作会社で受注できる懐の広さを強く感じています。もしかしたら、世界初、宇宙での映像制作作品という可能性もあるかもしれませんし。そういう初めての取り組みに対しても、前向きに積極的であるという精神があると思います。

熊谷

ROBOTでは今回の『ゴジラ-1.0』のような大きなプロジェクトに関わらず、幅広く様々な案件に携わることができるのも、ROBOTならではの強みではと感じています。

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